民法男子

法律好きな学生が何となく法律をテーマに小説(実話?)を書いてみた

民法男子第2話~債権と物権の違い②研究編~

「さあ、始めますか」

そう言って、取り出したのは数々の法律に関する資料と一台のノートパソコンだ。

そう、ここからが勝負と言ったのは、他でもない、参考答案では満足できないからだ。

参考答案が間違っているというわけではなく、一つの解答に過ぎないと考える。そして、ありゆる可能性と考え方をできる限りの考え方を模索する。法律の勉強とはそういうもじゃないだろうか。

 

「さて、まず一番に疑問に思う所は」

日野木がノートパソコンに打ち込んでいく、彼はいつでも見ることができるようにデータとして保存し、あとでメールと一緒に送ってくれから大助かりだ。

で最初のテーマは 

 

Q1債権侵害において妨害排除請求権が認められるのは不動産賃借権だけなのか

 

「いきなり、最後の部分から始まるけど一番に疑問に思ったのはこれだよ」

「だな、債権全体と見てどうかを考えたい」

そういって意見があった俺たちは本を漁る。

「あったあった」

見つけたので俺が本を声を出して読む。

継続的、反復的に債権侵害が行われるときに妨害排除請求権を認めるべきである、か。どういう意味だろう」

「ほら、物権は直接支配する権利だから、侵害したらずっと侵害し続けるわけじゃん。それと同じで債権も侵害を取り除かないと確保できない場合に限って認めるべきってことよ。要するに物権の性質により近い債権が認められやすいわけ。単なる売買契約を考えると分かりやすいぜ。申込みと承諾で契約した時点で債権債務は成立するから侵害以前に成立しちゃっているし。一回債務を履行すれば消滅するから一時点に過ぎないと考えたらいい。逆にずっと履行し続ける必要がある場合は侵害されたままだと、履行できなくなる。長いスパンだから取り除かないとそれ以降に響く、と

「そうなると結局、参考答案みたいに不動産賃借権に落ち着くわけだけど、長い間継続する契約として、考えられるのは単なる賃貸借・使用貸借・委任・雇用とか、あとは継続的な売買契約とか、考え方次第ではたくさんあるよね。まー正直な感想、実益性はないよーな」

「だよな」

「例えば物を貸して侵害されても賃貸人は所有権に基づく妨害排除請求権で回復できるから、わざわざ債権による妨害排除請求権を使う必要がないし。不動産賃借権もそうだけど、わざわざ論じたのは賃借人側から主張できないかと模索したんだと。だから、対抗力のついた不動産賃借権ならいけると論じたんだと思った」

「なるほどな、要するに本来なら債権に妨害排除請求権を認めずとも困る必要がないわけだし。そもそも根本的に債権の何が侵害され続けて何を取り除くのかがキーとなるわけで、侵害されてたら実行できないよって場合に認めるべきだというのがこの議論、でも大概、時すでに遅しで損害が発生するから損害賠償請求権。まあ、他にもこの本には債務者の引き抜き問題があるけど、個人の自由な意思によって債権債務が発生する以上、自由競争原理により認める必要はないと考えたら解決だな」

「大体こんなもんか」

「こんなもんだろ次いこう次」

日野木が次のテーマを打ち込む、ちなみに彼にパソコンを任しているのは俺が異様に打つのが遅いからだ。 

 

Q2 債権侵害における三つ類型(①債権の帰属を侵害した場合②債権の目的たる給付を侵害し消滅させた場合③債権を侵害したが消滅しなかった場合)のその具体例とは

 

 

「これはさっき解いた問題でもあったけど、債権侵害における不法行為の成立の可否において考えたんだったな。正確に分けると①債権の帰属を侵害した場合②債権の目的たる給付を侵害し消滅させた場合③債権を侵害したが消滅しなかった場合で③は相関関係説を取って違法性(背信性とか)が強くないと成立しない話。問題は」

「具体例が思いつかないこと(汗)どっちかって言うと、この問題って何かを法的に評価した後の話だよね・・・・・・」

 「そうだよな、だから具体例を問題として出されると詰む」

「じゃあ調べますかー」

「見つかった」

「はやっΣ」

 

①債権の帰属を侵害した例

・債権の準占有者として債務者から弁済を受け、債権者の債権を消滅させたetc

②債権の目的たる給付物を侵害し消滅させた例

・売買契約において、甲建物を放火して滅失させたetc

③債権を侵害したが消滅しなかった例

・二重譲渡や債務者に働きかけてもとある契約と両立しえない契約を結ぶことetc

 

「おおー、・・・・・・②と③は言われれば分かるけど、①がよくわからない」

「やってなかったからな・・・」

 「えーとなになに債権の準占有者とは債権者でないのに取引通念上債権者らしい外観を呈する者と判例では言っているね」

「言い換えると債権者じゃないけど債権者っぽい人、民法478条によると債権の準占有者に対してなされた弁済は善意+無過失の場合は有効なわけだ」

「要するに間違えて払っちゃったという場合でも善意+無過失ならオーケー。本物の債権者にとったらたまったもんじゃないね。債権者→債権の準占有者に対して債権の帰属侵害した(本当は債権者に帰属するべき権利が第三者である準占有者の登場により、債権者に帰属せず消滅したと言える)として不法行為によって損害賠償が請求できるというのはこういうことか」

「そういや、気になっていたんだけど、不法行為の要件として故意・過失はどうなってるわけ? 参考答案はあんまり触れてないんだけど、相関関係説を述べている以上、過失だけなら違法性が弱いから成立しないとかあると思うんだけど」

「んー、類型に当てはめると①は権利自体を侵害してるし、②は給付ができないことにより損害は確実だから、故意・過失でも成立すると考えたら良いけど、問題は③だな」

「違法性が強い場合に不法行為が成立すると考えるなら、要件としては故意が絶対必要だね、例えば契約するときにいちいち、他の人が先に契約していないかとか考えたら契約なんてできないし、二つの契約を結んだ本人が一番悪いと考えることができるから過失じゃ違法性が少ないと・・・」

 「それをわかりやすく言うと、ABCがいてBを起点にAとCとに二重譲渡した場合、Aの立場に立つと二重譲渡をした張本人であるBには故意だろうが過失だろうが不法行為責任は問えるが、第三者であるC不法行為責任を問うなら過失では問えず、Cがまず故意であることがまず必要ということだ。でさらに、故意であるからと言って、必ず不法行為が成立するわけじゃなくて主観的要件に過ぎなくて客観的要件として先ほど言った自由競争を逸脱したことが必要・・・だな」

「なるへそ、でも何でこの答案じゃあんまり触れてないんだろう」

「この本によると①は権利侵害しているから当然に不法行為が成立するからわざわざ要件として挙げるのは不適切であるって書いてあるから、この立場に立っているんだろ」

「それにしても、要件があってこそ効果があるからやっぱり書くべきだと思うよ。あ、とよく当然にとかいうけど魔法の言葉じゃないんだから」

「まあまあ、言いたい事はわかるが、あくまでも答案の参考だから」

「最後に③の類型で債務者の責任財産の減少とかあるけど」

「割愛で、また別の機会にやろう。外見て見ろよ」

「わわ、満月が。あっーーーそういえば」

「なんだ」

 「思い出した、三か月前に貸した、ゲーム返せよう」

「今、第三者に侵害されてるから(汗)」

「嘘つけ!」

「わ、わかった、来週の日曜日家に来い」

 

そして、日曜日、ゲームを返しに貰いに行くのだがまさか恐ろしい体験をしようとは夢にも思わなかったのである。

 

                                   続く

参考:論文基本問題②民法120選4第版

   ライブラリ法学基本講義5基本講義債権総論[角紀代恵]著

   ロースクール民法⑤(下)井上英治

*文字の色や太さは個人的判断です。

あと今回は多少、私見が入っているのでこのまま鵜呑みにして損害にあったとしても責任はとれないのであしからず。 あと補足ですが最近の学説では③の債権を侵害したが消滅しなかった場合は、個別具体的に判断する必要があり類型化するのは妥当ではないという学説があるそうです。参考までに。