民法男子

法律好きな学生が何となく法律をテーマに小説(実話?)を書いてみた

民法男子第7.5話~法学を学ぼう!! ~

~はじめにお読みください~

今回は特別編ということで、法律を学ぶにあたって私が参考にしている本やサイト等を紹介したいと思います。ですが、それについてのいくつかの注意点があるので必ず読んで守ってください。

1.当該ブログであるこの記事の目的は、法律を学ぶために日頃参考にしているものを紹介するだけであって不当な目的によるものではありません。

2.ここで紹介したものに対して、誹謗中傷等の不快なコメントはお止めください。また、紹介先にも同じことをするのはお止めください。

3.参考にしているリンクや本等のブログ開設者や著者から指摘があった場合、予告なく当該記事の変更・削除しますのでご了承ください。

その他モラルとマナーを守って、お読みください。よろしくお願いします♪

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東條克彦(以下:東)「と、言うわけで紹介していこうかなと」

日野木啓介(以下:日)「あくまでも対象は初学者(主に書籍紹介)から司法試験向け(主にブログ紹介)を対象向けだ、自分がどれを参考にするかは各自で判断してほしい。また、感想をだらだら書いてブログ開拓者や著者の意図と違いすぎても困るから、かなり主観的抽象的に書くのに注意だ」

 

~書籍篇~

東「ここでは日頃参考にしている書籍を紹介しておこうと思う」

日「まずはこれだ」

アニメキャラが行列を作る法律相談所

アニメキャラが行列を作る法律相談所

  • 作者: ronnor,庄司論平,エマ・パブリッシング,リクルトスツー,執筆協力:patRIOT /たまごまご
  • 出版社/メーカー: 総合科学出版
  • 発売日: 2011/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 32人 クリック: 707回
  • この商品を含むブログ (9件) を見る

 

日「ronnorさんのアニメキャラが行列を作る法律相談所だ、この本はアニメ・漫画好きにはたまらない本であると同時にアニメでの問題を法律で考えるという斬新な本だ」

東「この本は面白い、サクサク読める上に大まかな概要が頭に入るよ」

日「この民法男子のブログの作者が大学に入って初めて買った本でもあるらしい」

東「法律に少しでも興味がある人は是非読んでほしいね、法律もこう考えれば・・・と想像力を掻き立てる本なんだ」

日「だな、よろしく頼むぜ。おっと、次はこいつだ」

法律入門 判例まんが本〈1〉憲法・民法・刑法

法律入門 判例まんが本〈1〉憲法・民法・刑法

 

東「法律入門判例まんが本、これは重要判例を4コマ漫画形式にして分かりやすく説明している本だよ」

日「法学部なら知っておかねばならない判例、だが判決文や教科書を読んでもいまいちわからない、そんな時はこれというシロモノだ。原告が何故訴えを起こしたのかという大事な部分もわかりやすい」

東「今は10巻まで出ているかな? とにも、判例流し読みするならお薦め」

日「このように、法律というのは難しい分野だから、どうしても躊躇してしまう。だからこそ、読みやすい漫画から入るべきだと思う。そこから、大体内容が分かったらもっと専門的な本に入ればいいんだ、その方が理解しやすいと思うぜ」

東「じゃあ、今回の目玉となる本を紹介するよ」

憲法ガール

憲法ガール

 

日「大島弁護士さんが出した憲法ガールだ、これは待望の書籍化と言うべき」

東「最初はツイッターでこの存在を知ったんだ。ふとなしに読んでいると体が身震いしたね。大まかに言うと司法試験の問題をテーマに男女が解いていくという内容なんだけど・・・」

日「着眼点が鋭いすぎる。受験生が陥りやすい考え方を的確に捉え、修正していく・・・そして案外わかっていないリーガル思考。ここに出てくる主人公と自分を重ねてしまうほどに分析した内容と言えるブログだった(違う点と言えばリアルに出会いなんてないことぐらいw)」

東「実は行政法ガールというのもあって、最初はそっちから入ったんだ。それから、憲法ガールを読んでいたんだけど、ついにその憲法ガールが書籍化・・・」

日「感動だったな」

東「是非とも読んで頂きたい、考え方が変わるから、あと登場人物もいいね('ω`)」

日「オイ・・・」

東「最後にオマケとして、まだ読んでないが気になる本を書くよ。今民法男子の作者曰くアマゾンで注文中らしく、きちんと読んだら、機会を設け紹介するらしい。ほとんどがツイッターで教えて頂いたものばかり、ありがとうございます」

 

Constitution Girls 日本国憲法

Constitution Girls 日本国憲法

マンガで学ぶ藍ちゃんの著作権50講

マンガで学ぶ藍ちゃんの著作権50講

マンガ 法律の抜け穴〈1〉日常トラブル篇 法律の急所がわかる全25話

マンガ 法律の抜け穴〈1〉日常トラブル篇 法律の急所がわかる全25話

 

日「と3つあげてみた、どれもこれも楽しみだ。(民法男子の作者曰く、金欠で死にそうなのは内緒だというw)」

東「次はおススメブログだよ」

 

~ブログ編~

日「ここではお世話になっているブログを簡潔に紹介するぜ、是非とも中身は自分自身で確かめて欲しいんだぜ、ここからは作者自身が紹介していくぜ」

 http://kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp/

ぱうぜさんのサイト。大学院生向けかもしれませんが私は文章術やノートの取り方など大変参考にさせていただいています。例えば紹介にある三本線ノートにより、「できる」のではなく「わかる」ノートになりました。

http://asapbooks.doorblog.jp/

朝ぷさんのサイト。おススメの基本書を紹介しているブログ、何の本がいいのか迷っているときに必ず見るべきサイトだと思います。どんな本があって、自分に何があっているのか、探せるサイトです。みんながこれ使っているから・・・買うのではなく、是非このサイトで目星をつけるべきだと思います。

http://ameblo.jp/akagilaw/

赤木先生のサイト。司法試験向け。司法試験の問題をどういった考えで解くのか、また司法試験に向けてどういった勉強方法で挑んだらいいのかアドバイスが豊富なサイトです。勉強方法がわからないならまずここで見たらいいと思います。それだけではなく実務についても書いてあるので、それをテーマに取り上げるのも面白いかと思います。

http://ameblo.jp/lawschool-life/

たける先生のサイト。同じく司法試験向けです。憲法についてかなり深い内容が書かれています、憲法で詰んだら、まずここを見るといいと思います。私は三段階審査の書き方で大変勉強になりました。

以上がおすすめサイトです。何度も言いますが当サイト様に迷惑がかかることは絶対にお止め下さい。あと予告なく修正か削除しますのでご了承ください。

 

~ツイッター編~

 最後になりましたが、ツイッターで見つけたおススメの方々を一挙公開します(笑) これは口で説明するよりも実際にフォローして頂いたほうがいいかもしれません。フォローする際に注意点も実際に確認してからお願いします。

 

法学たん

みんながアイドル法学たん(笑)法学についてのツイートが豊富、botではなく、時事ネタや議論など多角的な視点からの法律を見ることができる。

 法学クラスタの毒舌な妹bot

グサリと刺さる・・・

憲法学たん

深い、とにかく深い内容の憲法を知ることができます。背景とか、教授とかの逸話等・・・

刑法

刑法を擬人化した感じでツイートを見ていてやりとりが楽しいかと思います。刑法のより深い沿革を知れたり・・・。

 

なお、ここで紹介したのは悪魔でも、私自身の感想です。是非とも自分自身の目で確かめてみてください。楽しい法律ライフを♪

 

いかがだったでしょうか、実はまだまだ紹介したいのですが、今回はとりあえずここまでにしときます。第二弾もやるかもしれませぬ。ではノシ 

 

 

 

民法男子第7話~取消しと無効②基本・研究編~

「無効と取消しについて、そもそも無効も取消しも法律行為を否認する手段なわけだが、これについて何か意見は?」

唐突に始まった勉強会、と言っても一人はパソコンに夢中でキーボードを叩く音が響くだけなのだが。

「意見ってのもなあ、それでいいんじゃないの?」

「・・・主張の仕方」

ボソッと呟く鏑木、ちょっとびっくりしたが、どうやら先ほどの言葉は訂正しないといけないらしい。彼も参加していたのだ。

「主張の仕方?」

「そうだ、鏑木の言うとおり。さっきお前が民法クエストでモンスターを倒そうとした

とき答えただろ、無効は最初から絶対的に無効であり、有効であることを前提に取消しは意思表示をすることで遡及的に無効である。』 と」

「あーあー、そういう意味ね。つまり、取消しは意思表示をして初めて遡及的に無効なわけだけど、無効は意思表示をする以前に最初から無効なわけだ、まーこうして見ると無効の方が効力が強いように見えるが」

「確かに、言い換えれば意思表示を介在しないと法律行為を否定できないわけだから、無効の方が法律行為を否定する手段としては意思表示を必要としない点で効力が強いと言えそう。だがしかし・・・」

「・・・無効と取消しの二重効

またもや、呟いた鏑木。話に入ってきたらいいのにと思うが、彼は話すのが苦手らしい。まあ、わかるけど。

「判例の立場だと無効と取消しは両方主張してもいいんだったね。理由はさっき日野木が言った両方とも法律行為を否定する手段に過ぎないことと、それと無効を主張するときは表意者だけに限定すればいいことと、表意者の保護のためか」

「そこから考えると無効と取消しは大差ないように思えるが・・・」

 「あえて反論したいと(笑)」

「まあ(笑)」

判例は神である。確かに、裁判所の先例は重視されるべきだろう。だが、やはりそれだけじゃあ面白くない。面白くないのだ。法学という学問に入った限りは考えなくてはならない。知識の探求、それが学問の面白さである。

「で、日野木ならどう反論する?」

「俺なら、取消しの余地がないことを主張したいな、やっぱり。無効と取消し、二つの概念は違う。無効は絶対的に無効であり、法律行為そのものの成立を否定する。逆に取消しは法律行為は容認しようと思えばできるが表意者の保護のために否定できる余地を作っておくみたいなイメージ、問題はそれをどう言うかだな」

「取消しと無効の条文規定にもよると思うけど・・・意思無能力者による無効と制限行為能力者の取消し、錯誤の無効、さまざまな規定が置かれているけど、何故錯誤は無効か何故詐欺は取消しなのか

「とどのつまり、そこが問題となる。どうも表意者の保護を図るというために無効と取消しを主張できるようにという理由は納得できない、権利行使者の観点からだと取消しは主張権者が限定されており(120条)、無効は誰でも主張できる・・・のだから、二重効を認めると無効を誰でも主張することを許すことになる。判例は表意者に限定すべきと言っているが、解釈に頼りすぎじゃないかな。あくまでも取消しの対象となる法律行為は容認できる法律行為が前提だと思う。つまり、取消しとは無効にすべき法律行為じゃないけども、表意者に選択させることにより表意者を保護するという考え方じゃないのか? 逆に無効は最初から無効なのだから、容認されてない・・・ここが上手く説明できないんだが

「うーん・・・。その容認っていうのは分かる。有効な法律として見てもいいよという考えだよね。取消しは。逆に無効はまさに無から何も生じないわけだから・・・頭がこんがらがってきた(笑)」

いつもは事前に調べてくるのだが、今回は唐突の勉強なので詰まる。常に答えがでるわけじゃないことはわかっているのだが。

 

と、その時

 

「・・・90条」

「え?」

民法90条見てみ」

鏑木の言葉だった。俺は唯一のアイテムである六法を開いた。

 

民法 90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

「何か気づかない?」

鏑木がそう言ったとき、俺はひらめいた。珍しく。

国家だ・・・」

「国家?」

国家の承認だよ、日野木」

「どういうことだ」

「民法の原則は自由な意思による私的自治だろ。だけど、誰しも自分の好き勝手というわけにはいかない。だから法律による制限がかかる

「なるほどな、その法律の制限の一態様こそ無効というわけだ」

「そう。だから図にすると」

 

 

法律行為の実現意思

(私的自治の原則)

↓<国家の承認(その法律行為を認めていいかどうかの判断)

法律行為の実現

 

「というわけ。だから無効とは国家が公序良俗のように私的自治の例外として認めなかった法律行為のことをいうべきなんだ」

「そうなると取消しは表意者保護に加えて私的自治に最大限介入しないように考えて制度と言えるな」

「私見だけど結局、判例についていうなら、その法律行為が無効と評価に値するべきか、つまり私的自治を制限してまで法律行為を最大限無効にする必要性があるか、それとも私的自治の最小限介入を抑えて、当事者に委ねることが適切かどうかを述べるべきだったと言えそう」

「なるほど、中々斬新な考えじゃないか東條」

「だろ、これは鏑木の・・・」

 

「できた」

 

言おうとした言葉を鏑木が遮った。どうやらゲームが改良されたらしい。

「さっそくやってくれ」

有無も言わさず俺を座らせると早く早くと言わんばかりに急かした。よほど自身があるのだろう。さっそく立ち上げてみた。

 

ジーーーーーーーーーーーーー

 

ドゥン!!!!!!!!

 

『お気の毒ですが、あなたのシステムデータは消失しました』

 

 

その場にいた全員が石化したのは言うまでもない。

 

                                 続く

 

 

参考:ロースクール民法③(上)井上英治

はい、こんばんは。最近ハードで泣きそうになってます(笑)今回は取消しと無効の二重効について述べました。私見入りまくりですハイ(笑) 基本的に私は二重効否定派です。だって肯定するなら錯誤や公序良俗も取消しでいいじゃないですか。まあ、そんなこんなで、ここまで読んでくださりありがとうございます。大学の都合上、毎週土曜日に更新できそうです。来週は番外編として本紹介とかやります 。

 

 

民法男子第6話~取消しと無効①~知識編~

「前は酷い目にあった・・・」

そうぼやいたのは、ある日の授業終わり。都合の関係で中々啓介と会えず、ようやく会えたときだった。

「ああ・・・、とにかく、あずさが料理作ったときは三十六計逃走だ、逃げろ逃げろとにかく逃げろだ」

まさにあずささんが作った料理は709条の不法行為の損害にあたるシロモノである。

「で、久しぶりに会えたわけだが、今日は何をする?」

「実は今日は東條に紹介したい奴がいる、ついて来てくれ」

「?」

日野木に言われるがまま、俺は後についていった。そこは普段滅多に行かない館であり、階段を下りは下って、地下2階まできた。ここに来るのは流石に初めてである。

ここに数ある部室があること認識した俺は、一室に目を奪われる。そこにはこう書いてあった。

 

『法と時の部屋』

 

「なあ、これってドラゴン・・・」

「ここだ、入るぞ」

ろくなツッコミができないまま、部屋に入ると、そこにはPCにひたすら向かう男の姿があった。

「よお、連れてきたぜ、鏑木」

「なんだ、君か」

不思議系の雰囲気漂う彼は鏑木信也という。もともとは政治学部で、なんでも法律の面白さに嵌まり、転科試験を受けて法学部に来たらしい。

「あーはじめまして、東條といいます」

「・・・どうも」

(鏑木は結構人見知りするタイプなんだよ)

ご忠告どうも。でもそれなら何で彼は紹介したのだろうか

「どう? 進んでいるか?」

「試作はできている」

「試作?」

「ああ、俺と鏑木はな、民法クエストゲームを作っているんだよ」

「みんぽうくえすとげーむ?」

 「それはな・・・」

日野木に話を聞くところによると、民法クエストとは某RPGをモチーフにお手軽に民法を学べるゲームらしい。法律に抵抗感がある人もみんな大好きゲームと融合すれば、なんとやら・・・らしい。なるほど、俺が呼ばれたのはテストプレイヤーというわけだ。

「というわけで早速やってくれ」

「わかった」

俺が一台のパソコンの前に座り、後ろに鏑木と日野木が覗きこんでいる形だ。

 

~民法クエスト~

『ようこそ民法クエストへ、あなたは魔王にさらわれた、王女様を助ける法律家です♪』

(法律家ってw)

 

どうやら自由にキャラを動かせるらしい。案外自由度が高い、ここがセーブポイント、ここが宿屋と・・・。

 

あ、敵が出てきた。

 

民法においての取消しと無効について述べてモンスターを倒せ』

 

・・・・・・なんつーアバウトな・・・タイピングしないといけないし

 

えーと、無効は最初から絶対的に無効であり、有効であることを前提に取消しは意思表示をすることで遡及的に無効である。 

 

『モンスターに50ダメージ。残りHP150。次に取消しと無効における主張権者について述べよ

 

なるほど、多分解答であってたら、ダメージを与えられるわけか。う~んゲーム性としては面倒かもしれない。

 

えっと、取消しは主張権者が限定されており(120条)、無効は誰でも主張できる。

 

『モンスターに50ダメージ。残りHP100。取消しと無効の追認の可否について述べよ

 

一問解答ごとに50ダメージか、つーことは、単純計算であと2問かな。

 

取消しは追認すれば確定的効果が発生するが、無効は追認しても効果が発生しない。

 

『モンスターに50ダメージ。残りHP50。無効と取消しの権利行使期間について述べよ

 

余裕余裕、取消権は追認するときから5年、行為の時から20年で消滅するのに対して無効はいつまでも消滅しない(126条)

 

『モンスターに50ダメージ。残りHP0。モンスターは倒れた。経験値100を得た。LV1が1上がった』

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・どう?」

 

「うーん、択一にした方がいいんじゃね?」

「ですよねー」

「・・・やっぱり択一の方がサクサク進むか、しかしそうなるとプログラムを組み直さないといけないな、ううむブツブツ・・・」

鏑木はそういうと座っていた俺を押しのけてパソコンと向き合ってしまった。

 

「気にするな、こーいうやつなんだよ」

確かに彼は変わっている気がする。

 

「それにしても、ありがとな。作っている側からするとイマイチ分からないんだわ」

「いやいや、でも中々面白い試みをしているじゃないか」

「まあな、あ、折角来たんだから、もっと詳しく取消しと無効についてやるかー」

「そうだな」

 

                             続く

参考:ロースクール民法③(上)井上英治

補足:はい、今回はかなり短めとなりました。すみませぬ。更新遅れたのにこの分量かよ・・・と思っても言わないでください。もれなくUp主の私のメンタルは紙クズなのでしねます。大学が思っていたより忙しく、アップアップ状態です、ハイ。今回は取消しと無効というわけで、最低限の違いを述べたに過ぎませんが案外、重要なところです。今回は基本編までの二段階構成でいきたいと思いますが、次の回は何故取消しと無効でこう違うのか、と踏み込んだ内容と共に、私見も書きたいので研究編に近くなるもやしれません。

あと、リーガルハイ面白かったですよね(笑)本当にありがとうございました。

民法男子第5話~売買における瑕疵担保責任③研究編~

「なんてね♪ 冗談よぉ東條さん」

「冗談に聞こえないんですけど・・・あずささん」

彼女の腕にはまだ気絶した兄がいた、顔色を変えることなく淡々と述べる彼女がまた怖い。

「その代わり、わたしが作ったピーチパイを食べてくださいね♪」

どっちにしろ死刑は確定だったようだ。

「というより、酷いですよう。見た目はアレですけど美味しくできたんですから」

見た目がアレな時点でダメな気もするが、本人も自覚があるらしい。

「わかったよ、あずささん。でも、やっぱり問題も解いてしまわないかい?」

「あ~また時間稼ぎをしようと思っているんですかぁ」

「違う違う、あずささんの意見も聞いてみたくて。あずささんまだ、習ったばかりでしょ。それなのにここまで鋭いなんて、法を学ぶ者として興味があってね」

「そんな言う程、わたしは鋭くないですよ、ただ法律に興味があるだけなんです」

流石、啓介の妹。こういうのに共通することは法律が好きだったり、法律に興味があったりすることだ。人は自分の好きなことになると潜在的な力を発揮する。そういうものではないだろうか。ゲームとかで、好きなキャラクターの名前や技、装備を丸暗記した覚えがあるけど、あれと同じ気がする。

「俺もだよ、法律は面白いよね。ささ、始めようよ。啓介は放っておいて。今回の問題だと特定物売買と不特定物売買に分けるからーーー、契約責任説には触れなくていいね。もう一回問題を確認しようか」

 

日野木啓介あずさ家具商から、娘のために婚礼家具一式を買い入れた。あずさはこの家具は防虫剤不要であると宣伝していた。ところが買入れ後、数か月もしないうちにこの家具の塗装に欠陥があったため虫がつき、家具は使い物にならなくなった。啓介あずさに対し、どのような請求ができるか。婚礼家具が特定物の場合と不特定物の場合に分けて論じなさい。

 

「瑕疵と570条の法的性質についてはやった、あとは動機の錯誤かな?」

「わたしもそう思います、お兄ちゃんは婚礼家具に防虫剤不要と信じて売買をしたので、それが効果意思に含まれない限り動機の錯誤になるかなと」

「法定責任説から考えるとそうなるよね、効果意思と動機を二つに分ける考え方、二元説を取って説明したほうが論理矛盾はしないはずだし」

「そもそも、それを前提にしてますよね」

「問題はそれが95条が適用されるかどうかの問題なんだけど、あずささんはどう思う? 俺は、錯誤主張はできないと思う。なぜなら、一般法(95条)と特別法(570条:特別に法定された責任と考えるから特別法)の関係に立つから」

「そうですね、確かに瑕疵担保責任が特別法だから、錯誤主張ができないという意見がありますが、わたしは錯誤主張を優先したいですね」

「それはなぜ?」

「錯誤だといつでも無効を主張できるから、買主の保護に繋がると思うんですよ。法定責任説をとると、損害賠償請求権の行使期間は一年しかないので、その期間が過ぎてしまえば何も言えなくなる、それは酷だと思います」

「判例の立場かな。酷だと言うけど、事実を知ったときから一年だからね。それを放置した買主に懈怠があるとは考えられないかな」

「確かにそうですね。でも、それだけじゃなく不特定物売買だと法定責任説ではなく167条1項が適用されるので10年ですよね、時効は。そう考えると1年と10年と特定物と不特定物と不均衡が生まれます。それも納得できないかなあと。しかも、不特定物売買だと570条が適用されないわけですよね、なら、特別法と一般法の関係に立たないので、錯誤の余地もあるかもしれないですし。そうなると、均衡を図るために特別に法定された責任なのに、こんなに差があるなんて均衡とは言えないと思います」

彼女の鋭い指摘に、俺はただただ、頷くのみだった。(もしかして、考え方なら俺や啓介より上・・・かもしれないorz)

「いやあ、あずささんはよく勉強してますね」

「い、いえいえ、すみません。法律になるとつい・・・」

どうやら、本当に法律が好きみたいだ。もう六法が彼氏のよう(殴)

「何かいいました?」

「い、いや、何も。今、あずささんが指摘した不特定物の10年というのは、1年という期間が過ぎた後に、570条との均衡を図るために信義則による主張を制限する考えがあるみたいだね」

「あー、ありましたね、わたしはその考え方にはどうも賛成できません。矛盾してますよね、10年という期間が原則なのに信義則で制限するなんて、それなら極論ですけど特定物も10年と考えるべきですよ、瑕疵の主張は買主がすると考えたら十分公平が考えられると思います」

「ふーん、矛盾ねえ」

どうやら、落とされた兄、啓介が目覚めたようだ。

「なーに、なにか言いたそうね、お兄ちゃん」

「いや、別に。それで俺も良いと思う」

何かが引っかかるが、話を進めることにした。

「さあ、この答案を軽く書いてみようか」

三人で、話あった結果。こうなった。

 

 

1.当事者の意思により、主観的に物の個性に着目して売買された場合は特定物であり、        そうでない場合は不特定物である。すなわち、本件婚礼家具が個性に着目された場合は特定物であり、そうでなければ不特定物である。以下、特定物と不特定物に分けて論じる。以下検討していく。

2.婚礼家具が特定物の場合

(1)買主である啓介はあずさ家具商に対して、婚礼家具に瑕疵があったとして瑕疵担保責任が追及することが考える。

ァ.婚礼家具に瑕疵があったと言えるか

目的物の瑕疵は、客観的な性質や性能等の客観的瑕疵概念で決めるべきではなく、個々の当事者の契約内容を基準として、そこから瑕疵があるかを決定する主観的瑕疵概念によるべきである。なぜなら、一律に客観的に決める客観的瑕疵概念によると、契約内容によって判断すべきである瑕疵が瑕疵と認定されず、妥当ではないからである。売主であるあずさ家具商は防虫剤不要と宣伝しており、それを買った買主である啓介との間に、主観的瑕疵概念として防腐剤不要の婚礼家具を内容とする基準があったというべきである。しかし、塗装の瑕疵により虫がつき、使い物にならなくなったのであるから、当事者の基準に沿ったとは言えないため婚礼家具に瑕疵があったといえる。

イ.婚礼家具に隠れた瑕疵があったと言えるか

隠れた瑕疵とは、買主で通常要求される程度の注意を用いても発見できない品質・内容等を言う。(買主の善意・無過失)婚礼家具に塗装に瑕疵があり虫がつくことは

、防虫剤不要と考えてた買主にとっては通常の注意を用いても、発見することができない性状の瑕疵であり、隠れた瑕疵というべきである。

ウ.婚礼家具の修繕等の完全履行請求権を請求できるか

570条の法的性質の解釈により、請求できるかが決定される。

思うに、特定物売買は483条により、売主は現状引渡し義務のみを負うため、その物のみを引き渡せば債務不履行の問題は生じないと考える。これは、物の瑕疵という性質は効果意思に入らず動機にあたるからである。しかし、これだと買主の保護に欠けるため、法律が特別に売主に瑕疵担保責任を課したと解する。(法定責任説)

したがって、415条は適用されず、570条のみが適用されるため、啓介はあずさ家具商に対して完全履行請求できない。

オ.何が行使できるか、また、損害賠償の範囲がどこまでか

買主が善意であれば、売主に損害賠償でき、契約の目的が達成することができなければ契約を解除できる。これらは、買主が瑕疵を知ってから、1年以内に行使する必要がる。(570条、566条)ところで、買主が売主に対して請求する損害賠償の範囲が問題となる。前述のとおり、法定責任説による債務不履行問題が生じない以上、履行は完全に行われたというべきである。すなわち、完全に履行が行われたら得たであろう利益である履行利益までは求めることができず、契約が有効であると信頼して被った損害である信頼利益までが損害賠償として求めることができない。

(2)啓介は婚礼家具に防虫効果があると信じており、動機の錯誤がある。(性質の錯誤)そこで、錯誤無効(95条)を主張することが考えられる。

ア.動機の錯誤に95条が適用されるか。

95条は表意者を保護する主旨であるが、相手側からすれば表意者の動機を知ることはできないため、無効を認めてしまえば不測の事態を被る恐れがある。そのため、動機が表示された場合に限り、95条が適用されると解する。したがって、本件は表意者の動機が表示されたわけではないが、相手方が防虫剤不要と宣伝していたため、表意者に防虫剤不要の婚礼家具を給付してもらう動機の表示があったといえる。

イ.要素の錯誤にあたるか

防虫剤が不要という理由により、売買契約を締結しているにもかかわらず、塗装の欠陥により、虫がつくようなら啓介も一般人も契約を結ばなかったと考えられるから、意思表示の重要部分に錯誤があったといえ、要素の錯誤にあたる。

ウ.瑕疵担保責任との関係はどうか。

判例は瑕疵担保責任が優先し、表意者は錯誤無効を主張できないと主張しているが妥当ではない。確かに、瑕疵担保責任は特別法であるが、それは債務不履行が問題にならない代わりに買主を保護するという趣旨から見て、415条に対して特別法だというべきである。さらに、後に述べる不特定物と比べると瑕疵担保責任は知ったときから1年なのに対して、一般債務不履行の原則は10年という時効があるため(167条1項)期間に不均衡が生じる。そのため、錯誤主張も認めて特定物売買と不特定物の買主に均衡を認めるべきである。したがって、啓介は錯誤無効も瑕疵担保責任も主張できる。

3.婚礼家具が不特定物の場合

不特定物売買でも担保責任責任を追及することが考えられるが、法定責任説を前提に考えると目的物が特定されていない限り、買主は完全履行請求すればよいので570条の適用の余地はないと解するべきである。そのため、415条のみが適用され、啓介としてはあずさ家具商に故意・過失があった場合のみ、債務不履行を追及ができる。

したがって、あずさ家具商が故意、または過失があれば、啓介は不完全履行の効果として、損害賠償請求のほか、完全履行請求ができる。また、契約の解除ができる

                                  以上

 

「やっぱり、こう書いてみるとミソは特定物だと570条。不特定物だと415条という理論づけが如何にできるかがキーとなるわけだ」

「だね、不特定物の方がパンチが弱い気もするけど」

「まあ、大方前半で説明したから、そこは一般要件の当てはめでいいだろう」

 「もし、契約責任説だと特定物と不特定物を分ける必要がないという論理から一括で570条で説明すればいいわね」

「・・・ふー、流石に疲れたな。甘いもの食べたいな」

「あ、それフラグ・・・」

その言葉を聞いて彼女は満面の笑みを浮かべ、思い出したかのように冷蔵庫からXXXXX(冷蔵庫に入れてたことにより、より一層えげつない物体に進化したのだ)を取り出した。

 

 

わ  す  れ  て  た

 

 

 

その後、彼らの阿鼻叫喚が聞こえてきたという。

 

                                続く

 

参考:基本講義債権各論Ⅰ第2版《潮見佳男著》 

   論文基本問題②民法120選4第版

   ロースクール民法⑤(下)井上英治

今回は問題解答というわけで、書いてみました。契約責任説をむりやり論じたか          ったのですが、分けて論じよということは、違いを比較せよということでもあるので、法定責任説をとりました。いずれ、契約責任説も書きたいですね。あと、来週から大学が始まるので取り扱う内容は簡易なものになるかもしれません(笑) 

 

民法男子第4話~売買契約における瑕疵担保責任②基本編~

「流石、あずさだな」

「えへへ、ありがとうお兄ちゃん♪ じゃあ」

「じゃあ、次はこれを考えてみようぜ」

日野木は本棚の中から、本を取り出し、ここにいるみんなに見せた。

 

AはB家具商から、娘のために婚礼家具一式を買い入れた。Bはこの家具は防虫剤不要であると宣伝していた。ところが買入れ後、数か月もしないうちにこの家具の塗装に欠陥があったため虫がつき、家具は使い物にならなくなった。AはBに対し、どのような請求ができるか。婚礼家具が特定物の場合と不特定物の場合に分けて論じなさい。

 

「おお、瑕疵担保責任を使った問題だな、早速解いてみようよ」

俺はすかさず、彼にのる。

「ぶー、わかったわよ、面白そうだし♪」

彼女も乗ってくれた。これでなんとかなる・・・ハズ

「その前に・・・だ。前々から思っていたんだが、こういうAとかBってのはいささか分かりづらい」

「というと?」

「イメージがしにくいと、何を書けばいいかわからないってことだ。こういう問題の場合、自分なら誰に何を請求したいと考えたらわかりやすい。つまり問題文を書き換えるとこうなる」

 

俺(日野木啓介)あずさ家具商から、娘のために婚礼家具一式を買い入れた。あずさはこの家具は防虫剤不要であると宣伝していた。ところが買入れ後、数か月もしないうちにこの家具の塗装に欠陥があったため虫がつき、家具は使い物にならなくなった。あずさに対し、どのような請求ができるか。婚礼家具が特定物の場合と不特定物の場合に分けて論じなさい。

 

「ちょっと~、何で私が売主なのよ~」

不満をあらわにするあずさ。

「そりゃあ、あずさは瑕疵を作るに関して天下一品だからな、ははは」

「え?」

「あ、ああ、なるほどね、うん。よし、よしこれで行こう」

俺は啓介に余計なことを言うなと 小声で注意した。

「あ、ああ。まずは隠れた瑕疵があるかどうかだな」

「さっきやった、瑕疵概念を使うと主観的瑕疵概念で考えてあずささんは防虫剤不要であると宣伝していたと」

「もう、東條さんまでぇ」

「あ、いや、ごめんごめん」

「もーいいわよぉ、で、お兄ちゃんは私との間で防虫剤不要である婚礼家具を目的物とした売買契約を結んでいるでいいのかな

「いや、そう考えるよりかは俺とあずさの契約において、防虫剤不要である家具を給付するという基準ができたというべきだろう。つまり、基準から外れている=防虫剤不要と言っていたにも関わらず、家具の塗装に欠陥があり、虫がついているために使い物にならなくなったことは物の瑕疵にあたる言える」

 「なるほどな、じゃあ、次はお待ちかねの・・・」

「待って!東條さん、今のはまだ、瑕疵があると言えただけで『隠れた』瑕疵があると言えてないわ」

「おっとと、ありがとう。あずささん忘れていたよ(もちろん、わざとだが)隠れたのは買主の善意・無過失だから、この瑕疵を知らなかったことでいいのかな」

「正確には無過失も含むから、買主が注意をしてないと発見できない品質、性能と付け加えたほうがいいかもね、その方がパンチが強いし」

流石、兄と妹、説得力が強いということを同じパンチが強いと表現するのは遺伝子か。

 「なるほど、じゃあ当てはめると家具の塗装に欠陥があり、虫がついたことは買主である啓介にとっては注意をしていても発見できない品質・性能であるから隠れた瑕疵にあたるとすればいいね」

「うんうん、順調順調。これで次の論点である570条の法的性質にいけるな。さて、問題だ。何故、法的性質が問題になるのか、だ。」

「はい!はいー! もし私が買主だったら、売主に損害賠償と契約解除と新しいもの欠陥直せっコノ野郎て言いたくなるから、それができるかが問題になると思うからでーす♪」

「欠陥直せコノ野郎・・・?」

「あっ、いや、えと、完全履行請求ができるかな~って」

聞き間違いだろうか。

「あずさの言うとおり。その考えから法定責任説契約責任説に分かれてできるかでが変わってくる、まずは法定責任説だが・・・」

「法定責任説ってのは、要するにあれだ、特定物売買においては現状のまま引き渡しをすれば、それは履行したことになり債務不履行にはならない。だが、それじゃあ買主が可哀想だから特別に法定された責任を売主に負わせることによって公平を保つための制度である。どーよこれ言ったろ」

「相変わらず、その言い方が好きだな」

「こーゆうのは、もう頭に入ってんだよ。あってるだろ」

「まあ、あっているけどな。で逆に不特定物売買だと570条で処理できず、債務不履行で処理する。不特定物であることから再履行を頼んでもいいしな」

「うーん」

「どうした、あずさ」

「それで良いと思うけど、なんで特定物売買だと現状のまま引き渡せば債務不履行にならないのかが抜けてるわ、条文だけじゃ、パンチが弱い気がするの」

「なるほど・・・でもそれならあずささんはどう考えるのかな」

「総則で習った効果意思の問題かなぁと、ほら、錯誤のときに性質の錯誤は動機の錯誤であって効果意思に含まれないってあったじゃないですか。そこから、特定物売買のときは”目的物”であって目的物の性質までは動機に過ぎないから、目的物を引き渡せば債務不履行にならない・・・と」

「おお、凄い、凄いよ、あずささん。今の一番の説得力だよ!」

「いや、わたしはただ思ったことを言っただけで・・・」

「ははは、またまた流石と言わざるをえないな」

「ありがとう、ねえ、そろそろ私が作ったピーチパイ食べない?(俺らにとっては死亡宣告)」

「!」

「!」

俺たちはお互いに顔を見る。

(どーすんだよ、そういやそもそも時間稼ぎしても意味ねえじゃねーか)

(違うんだよ、あともう少ししたら、あずさは習い事に行かなくちゃならない)

(習い事?)

(ああ、そして行っている間にこれを処理する。いいな)

(なるほど、それまで時間稼ぎをすれば食わなくていいわけだ)

(その通り)

(ラジャー、状況を開始する!)

「あ、あずささん。まだ俺、お腹減ってないんだよ、折角作ってくれたし、もうちょっと後でいいかな」

「え? でも私、習い事・・・」

「あーずさ、ピーチパイはひとまず冷蔵庫に入れてだな、ほら、まだ法定責任説の損害賠償範囲と契約責任説が残っているじゃないかー」

「え、ええー」

「ええと、日野木の立場なら、あずさ家具商にもう一度履行請求したい、でも法定責任説の立場からは特定物を引き渡した時点で履行は終わっているから完全履行も請求できないし、修補請求もできないでいいよね、あずささん」

「そ、そうですね」

債務不履行415条は使えないから、損害賠償範囲は信頼利益に限られる、そうだなあずさ」

「そ、そうでけど、もー二人ともどうしたの!」

「い、いや別に・・・ねえ」

「あ、そうだよなあ」

「(なんかあやしい)」

「まあまあ、あずさ、せっかくここまで来たんだぜ。契約責任説いこう」

「・・・わかったわよう」

ジト目で見るあずさを余所に話を進めることにした。

「契約責任説は、570条を債務不履行の特則として考えるんだったね」

「そう、つまり簡単に言うと570条は債務不履行の効果で使えるということ。それが意味することは、特定物と不特定物はそもそも問題にならないし、法定責任説と違って完全履行請求権を有するでいいな、あずさ」

「さっきから聞いてくるけどお兄ちゃん私より先に習ったんでしょ・・・」

「確認だよ、確認」

「・・・・・・・」

「さっきのあずささんの法定責任説を反対解釈して、契約責任説は瑕疵のない目的物を引き渡すこと=目的物の性質を含んだ動機までが効果意思と考えることができるでいいね。不特定物の場合でも、570条により完全履行請求ができる限り考える必要がない・・・でオーケーか」

「その考えで大丈夫な筈だ、強いて言うなら瑕疵のある目的物を引き渡したならそれは不完全な履行であるという点が決定的に法定責任説と違うということだ」

「・・・・・・・」

「なるほどな、で損害賠償も債務不履行の特則だから履行利益・・・と」

「じゃあ、本格的にこの問題を考えていきたいんだが、今回は特定物と不特定物を二つに分けて論じなさいとのことだから、この問題においては契約責任説を考える必要はないな。それなら時間稼ぎ契約責任説を考える必要はなかったか、HAHAHA

「じかんかせぎ? それは・・・どういうことかな・・・お兄ちゃん?」

うわ、馬鹿と言っても遅い、覆水盆に返らず・・・だった。そして何よりも驚いたのは彼女の変貌にあった。

「う、いや、あの、いやな、あー、そういや、お前、習い事」

「今日は習い事休みだよ、お兄ちゃん」

「うえぇ、まじか」

「あと、いつも隠しごとをしたときは私の事をお前っていうよね、お兄ちゃん」

この低音で言うお兄ちゃんとの言葉が一番恐かった(後談)

「すまん、許してくれ、俺はまだ生きたい! あの得体の知れないものを食って死ぬのは嫌なんだああああああ・・・・あ」

いつも、冷静な日野木、こいつの弱点が今わかった。妹だ、妹を前にしたら、彼の思考能力は停止し、言わなくていいことまで言ってしまうのだ。

「そ~う、へえ、そうなんだ~」

笑顔が怖い。

「す、す、すまない、あずさ」

「そこに座れ」

「は、はいィ」

兄である日野木を座らせると、あずさは後ろに回り、首元で腕を交差させた。

まぎれもない、チョークスリーパーである。

「あががががががが・・・」

「東條さん、実はわたし、古武術を習っているんです♪」

習い事は古武術だったのだ。あ、落ちた。

「さてと、東條さん覚悟はいいですか?」

「\(^o^)/」

 

                             続く

参考:基本講義債権各論Ⅰ第2版《潮見佳男著》

   論文基本問題民法②120選

   ロースクール民法(下)

補足:今回は法的性質に基本的なことを述べました。問題は次の研究編で解こうかな      と、錯誤問題もそこで取り扱おうかと。しかし、ブログで小説(しかも法律)は大変ですね(笑) 相変わらず、文字の大きさと色は個人的判断です。あと絵師さん募集ちう(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民法男子第3話~売買契約における瑕疵担保責任①知識編~

日曜日、俺は日野木と近場の駅で待ち合わせて、彼の家に向かった。目的はゲームの返還だがそれだけではなく、瑕疵担保責任について勉強しようと考えていた。

「そういや、お前ん家行くのは初めてだな」

「そうだったか? まあ、しがない一人暮らしだ」

日野木はもともとは福岡県出身で、こちらの方に下宿で暮らしているらしい。

「ついたぞ」

「お~」

まあ、普通のアパートである。鉄の音を響かせながら階段を上った。

「ここだ、開けるぜ」

日野木が開けようとしたが、その前に勝手にドアが開き盛大に日野木の顔に直撃した。

「痛っっっっっアアああああああああああああああああ」

日野木は顔面をおさえ、悶え苦しむ。

そんな日野木を余所に中から出てきたのは純粋で黒いストレートの髪をした清楚な女性だった。

「あら、こんにちは」

彼女の透き通った声と神々しいほどの笑顔に、何かがはじけ飛んだ俺は悶える日野木を掴み、こう言い寄った。

「貴様という奴は、こんな可愛い子と同棲しやがって・・・・・・テメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

完全にひがみである。

「ま、待て待て待て」

顔をおさえながら止めようとするが止まらない。

「問答無用! リア充爆発しろ!」

「だっーー、俺の妹だってのーーー」

「うるせえ、裏切者めぇ・・・・・・って妹?」

「はじめまして、日野木あずさって言います、兄がいつもお世話になっています」

なんと、このぶっきらぼうの日野木とは似ても似つかない(本人曰く、ほっとけ)彼女は妹だという。

「おい、聞いてないぞ、妹がいるなんて」

「言ってないからな、実は俺も驚いている。ところであずさ、何でここにいる?」

「言ってなかった? お兄ちゃん、遊びにきたのよ」

「げ・・・お前、まさか・・・」

「さあさあ、そんなとこにいないで家の中に入ってよ。えーと」

「東條です」

思わず敬語になる。

「東條さんもどうぞ♪」

彼女に導かれながら、部屋に案内された。

そこで俺と日野木は床に座り、ホッと一息をついた。

「じゃあ、準備をしてくるから待っててね♪」

彼女は一緒に休む間もなく、そう言って台所に向かった。どうやら何かを作ってくれるらしい。今時、珍しい良い子じゃないかと思った。

「・・・・・・」

そんな妹がいるにも関わらず、日野木は何故か怪訝な顔をしている。

「・・・じゃあ、待っている間にやっときますか」

空気を読んだつもりで俺は、法律の話を持ち込んだ。

「今日やるテーマは売主の瑕疵担保でどうだ、570条の」

「・・・・・・」

「おい、聞いてる?」

「ん、ああ・・・、売主の瑕疵担保だな、やろう」

この時、俺は気づいた。彼は怪訝な顔をしているのではなく、何かにおびえていることに。

「どうしたんだよ? さっきから」

「い、いや、なんでもない。じゃあ、まず瑕疵担保責任とは何かを考えてみるか」

「いきなり大雑把だなあ、・・・・・・瑕疵担保責任とは570条なら目的物に隠れた瑕疵があった時に、566条を準用して損害賠償とか契約の解除ができるとかでいいんだろ」

「確かに、561条以下は瑕疵担保責任を規定しているけど、そもそも何で瑕疵担保責任っていうか」

「ん~、瑕疵は欠陥、キズだろ。担保責任は保証?みたいな感じでいいのかな」

「俺もそうだと思う。売買契約の瑕疵担保責任を取って考えると目的物に欠陥があると買主は不利益を被る。だから、不利益を被ったときに填補できるように損害賠償や契約の解除を認めた=担保責任である

「なるほど、瑕疵があった時に担保責任を負わせるから瑕疵担保責任か、ってそのままだな」

「担保責任って自体あまり、なじみがないからな。ちょっと理解しとくだけで全然違うぜ」

「だな、そういや瑕疵担保責任をやるって言ったものの、何をやる? 考えてなかった」

「570条だろ、やっぱり。あまりにも有名な学説の対立があるしな」

「了解、じゃあ効果から、結構シンプルだし」

「570条は566条を準用しているから、①買主は売主に対して損害賠償請求と②瑕疵があるために契約の目的を達成することができないときは催告なしで契約を解除することができると要するに効果は損害賠償と契約解除の2種類、これは原則な」

「この損害賠償の損害は瑕疵による損害でいいんだよな、原則」

「原則・・・な後でやる学説によって範囲が異なることに注意な」

「もちろん、それはわかっている、それは後回しにして次はこの効果を発生させる要件だけど・・・物に瑕疵があるとき、この瑕疵は主観的瑕疵概念個々の契約の目的に照らして目的物が有するべき品質や性能が欠いていることが通説みたい」

「まあ、それは妥当だろう。なぜなら、もう一つの要件として隠れた瑕疵ってのがあるが、主観的瑕疵概念ではなく、物の客観的・物理的な性能を欠いているときを瑕疵とする客観的瑕疵概念だとすると見た目で分かるものは分かるじゃん。と、隠れた瑕疵が要件だから、あとは使ってみないと瑕疵が発見できない物に限定されてしまうからな、瑕疵担保責任の範囲を広くとるのがベストだろう」

「要するに、当事者が決めた基準=主観的から考えて、個別に対応できると考えてもいいね。だからこそ、環境瑕疵〈マンションの日照り等〉心理的瑕疵〈購入した建物で自殺があったケース等〉も物の瑕疵に含まれると言えるわけか。でもさ、こうなると瑕疵の範囲確定が非常に難しいよな、裁判官が決めることだろうけど。こう書くよりかは・・・」

「こう書くよりかは?」

「心理的瑕疵の場合だけど、心理的瑕疵があるから物の瑕疵ではなく、当事者が決めた基準からずれている心理的瑕疵が物の瑕疵だと思うんだ。自殺をした家に住みたくないという話が出ているときに基準ができる。それなのに見た目じゃわからないか調らべてみたら自殺していた。すると基準からずれているから物の瑕疵にあたる。それはわかる。でも、話が出てこなかったときが問題、売主に自殺していない建物を提供する義務があるか、契約に盛り込まれているかどうか」

「そうなると付随義務の問題になるんじゃないか、それか誰だって自殺した建物に住みたくないという一般的な感覚からの判断」

 「付随義務にいれると範囲が広がりすぎると思うんだよ、そんなことを義務にしていたら売主に負担になるし、一般的に考えてが一番妥当だと思うけど境目が難しいなあと」

「確かに、難しい・・・だが、主観的瑕疵に考えると瑕疵があっても物の瑕疵に当たらないこともあると考えることもできる、なぜなら、当事者の基準によるから。そう考えるとある程度そこでバランスがとれると考えたらいい」

「んーーー、やっぱり面白いけど一つ一つ紐をほどくと大変だなあ、まさか主要な学説の前にここで盛り上がるとは」

「実質、実務と理論は違うし、そりゃあ、な。だがそれがいいよな」

「二人ともできたよー♪」

元気の良い声が聞こえてきた。何を作っているかは分からないがどうやらできたらしい。

「げ・・・・・・」

突然、日野木が震えだした。普段、冷静な彼が。先ほどの態度といい、おかしいなと思っていたが、その理由はすぐにわかった。

「今日は特別に十八番のピーチパイを作ったんだ! 二人で食べてね♪」

目の前に置かれたのは、紫色と黒色がマーブル色のような得体のしれない物体があった。かろうじてパイの形はしているが、ピーチとは何だったのかと思わせる一品だった。 

俺は驚きを隠せずに小声で日野木に話した。

(これは一体どういうことだよ)

(実はな・・・あずさは料理がクソ下手なんだ、そして趣味が料理っていうやつな)

(ベタすぎんだろ、漫画じゃないんだから)

(そうだ、漫画じゃない、だからやばい。食べたら死ぬ。損害発生だ。まさにあずさが作るのは『瑕疵ある菓子』ってな、ははは)

(ははは、じゃない! 死亡フラグ立ちすぎんだろ、なんとかしないと、そうだ彼女を巻き込め! 話をできる限り伸ばすんだ)

(それはナイスアイデア! 幸い彼女は俺達と同じ法学を専攻しているから話は通じる)

「どうしたの? 食べないの?」

「あ、ああ、あずさ、そういや、お前、最近瑕疵担保責任やったろ。さっき俺たちは要件について話してたんだ」

「それで?」

「条文では隠れた瑕疵と規定しているが、この『隠れた』の意味、お前なら、どう考える?」

(上手い、これなら・・・)

「う~ん、最初の学説の立場は外に現れた瑕疵の対比として隠れた瑕疵のことを言ってみたけど、判例で隠れた瑕疵=買主の善意無過失としているみたいだね♪ わたしとしては主観的瑕疵概念で瑕疵の範囲を広くとっているから、隠れたの要件を善意・無過失にしてバランスを取っている気がするなぁ」

この妹・・・できる。顔色を変えずに何も見ずに淡々と述べている。これでは時間稼ぎは・・・こうなったら

「・・・あずささん、買主の善意・無過失は誰が主張するのかな? 」

思わず間を持たせるための応急処置である。

「善意無過失を主張するというより、悪意有過失を主張する感じかな、買主として見てみて、瑕疵を発見できなかったことを主張すれば善意無過失が推定されるから、それを突き崩す形で売主が買主の悪意有過失を主張する感じだと思います♪ 買主に善意無過失の立証責任を負わせると酷だと思うので・・・」

「なるほど・・・」

彼女の的確な意見に頷くしかなかった。こうなると、次は主要な議論に持ち込むしかない。この物体を食う時間を少しでも延ばすために・・・

 

                             続く

 

参考:ライブラリ法学基本講義債権各論Ⅰ [第2版]潮見佳男著

補足:今回は争点が多く、要望もあったので知識編・基本編・研究編と三部構成でいきたいと思います。そこで今回は瑕疵担保の基本的な効果である契約の解除と損害賠償について述べ、要件である瑕疵の意義と隠れた瑕疵について書きました。瑕疵担保責任である法的性質である法定責任説と契約責任説は基本編で述べたいと思います。あと、相変わらず私見がちょびっと入っているので鵜呑みにしないでください。   

民法男子第2話~債権と物権の違い②研究編~

「さあ、始めますか」

そう言って、取り出したのは数々の法律に関する資料と一台のノートパソコンだ。

そう、ここからが勝負と言ったのは、他でもない、参考答案では満足できないからだ。

参考答案が間違っているというわけではなく、一つの解答に過ぎないと考える。そして、ありゆる可能性と考え方をできる限りの考え方を模索する。法律の勉強とはそういうもじゃないだろうか。

 

「さて、まず一番に疑問に思う所は」

日野木がノートパソコンに打ち込んでいく、彼はいつでも見ることができるようにデータとして保存し、あとでメールと一緒に送ってくれから大助かりだ。

で最初のテーマは 

 

Q1債権侵害において妨害排除請求権が認められるのは不動産賃借権だけなのか

 

「いきなり、最後の部分から始まるけど一番に疑問に思ったのはこれだよ」

「だな、債権全体と見てどうかを考えたい」

そういって意見があった俺たちは本を漁る。

「あったあった」

見つけたので俺が本を声を出して読む。

継続的、反復的に債権侵害が行われるときに妨害排除請求権を認めるべきである、か。どういう意味だろう」

「ほら、物権は直接支配する権利だから、侵害したらずっと侵害し続けるわけじゃん。それと同じで債権も侵害を取り除かないと確保できない場合に限って認めるべきってことよ。要するに物権の性質により近い債権が認められやすいわけ。単なる売買契約を考えると分かりやすいぜ。申込みと承諾で契約した時点で債権債務は成立するから侵害以前に成立しちゃっているし。一回債務を履行すれば消滅するから一時点に過ぎないと考えたらいい。逆にずっと履行し続ける必要がある場合は侵害されたままだと、履行できなくなる。長いスパンだから取り除かないとそれ以降に響く、と

「そうなると結局、参考答案みたいに不動産賃借権に落ち着くわけだけど、長い間継続する契約として、考えられるのは単なる賃貸借・使用貸借・委任・雇用とか、あとは継続的な売買契約とか、考え方次第ではたくさんあるよね。まー正直な感想、実益性はないよーな」

「だよな」

「例えば物を貸して侵害されても賃貸人は所有権に基づく妨害排除請求権で回復できるから、わざわざ債権による妨害排除請求権を使う必要がないし。不動産賃借権もそうだけど、わざわざ論じたのは賃借人側から主張できないかと模索したんだと。だから、対抗力のついた不動産賃借権ならいけると論じたんだと思った」

「なるほどな、要するに本来なら債権に妨害排除請求権を認めずとも困る必要がないわけだし。そもそも根本的に債権の何が侵害され続けて何を取り除くのかがキーとなるわけで、侵害されてたら実行できないよって場合に認めるべきだというのがこの議論、でも大概、時すでに遅しで損害が発生するから損害賠償請求権。まあ、他にもこの本には債務者の引き抜き問題があるけど、個人の自由な意思によって債権債務が発生する以上、自由競争原理により認める必要はないと考えたら解決だな」

「大体こんなもんか」

「こんなもんだろ次いこう次」

日野木が次のテーマを打ち込む、ちなみに彼にパソコンを任しているのは俺が異様に打つのが遅いからだ。 

 

Q2 債権侵害における三つ類型(①債権の帰属を侵害した場合②債権の目的たる給付を侵害し消滅させた場合③債権を侵害したが消滅しなかった場合)のその具体例とは

 

 

「これはさっき解いた問題でもあったけど、債権侵害における不法行為の成立の可否において考えたんだったな。正確に分けると①債権の帰属を侵害した場合②債権の目的たる給付を侵害し消滅させた場合③債権を侵害したが消滅しなかった場合で③は相関関係説を取って違法性(背信性とか)が強くないと成立しない話。問題は」

「具体例が思いつかないこと(汗)どっちかって言うと、この問題って何かを法的に評価した後の話だよね・・・・・・」

 「そうだよな、だから具体例を問題として出されると詰む」

「じゃあ調べますかー」

「見つかった」

「はやっΣ」

 

①債権の帰属を侵害した例

・債権の準占有者として債務者から弁済を受け、債権者の債権を消滅させたetc

②債権の目的たる給付物を侵害し消滅させた例

・売買契約において、甲建物を放火して滅失させたetc

③債権を侵害したが消滅しなかった例

・二重譲渡や債務者に働きかけてもとある契約と両立しえない契約を結ぶことetc

 

「おおー、・・・・・・②と③は言われれば分かるけど、①がよくわからない」

「やってなかったからな・・・」

 「えーとなになに債権の準占有者とは債権者でないのに取引通念上債権者らしい外観を呈する者と判例では言っているね」

「言い換えると債権者じゃないけど債権者っぽい人、民法478条によると債権の準占有者に対してなされた弁済は善意+無過失の場合は有効なわけだ」

「要するに間違えて払っちゃったという場合でも善意+無過失ならオーケー。本物の債権者にとったらたまったもんじゃないね。債権者→債権の準占有者に対して債権の帰属侵害した(本当は債権者に帰属するべき権利が第三者である準占有者の登場により、債権者に帰属せず消滅したと言える)として不法行為によって損害賠償が請求できるというのはこういうことか」

「そういや、気になっていたんだけど、不法行為の要件として故意・過失はどうなってるわけ? 参考答案はあんまり触れてないんだけど、相関関係説を述べている以上、過失だけなら違法性が弱いから成立しないとかあると思うんだけど」

「んー、類型に当てはめると①は権利自体を侵害してるし、②は給付ができないことにより損害は確実だから、故意・過失でも成立すると考えたら良いけど、問題は③だな」

「違法性が強い場合に不法行為が成立すると考えるなら、要件としては故意が絶対必要だね、例えば契約するときにいちいち、他の人が先に契約していないかとか考えたら契約なんてできないし、二つの契約を結んだ本人が一番悪いと考えることができるから過失じゃ違法性が少ないと・・・」

 「それをわかりやすく言うと、ABCがいてBを起点にAとCとに二重譲渡した場合、Aの立場に立つと二重譲渡をした張本人であるBには故意だろうが過失だろうが不法行為責任は問えるが、第三者であるC不法行為責任を問うなら過失では問えず、Cがまず故意であることがまず必要ということだ。でさらに、故意であるからと言って、必ず不法行為が成立するわけじゃなくて主観的要件に過ぎなくて客観的要件として先ほど言った自由競争を逸脱したことが必要・・・だな」

「なるへそ、でも何でこの答案じゃあんまり触れてないんだろう」

「この本によると①は権利侵害しているから当然に不法行為が成立するからわざわざ要件として挙げるのは不適切であるって書いてあるから、この立場に立っているんだろ」

「それにしても、要件があってこそ効果があるからやっぱり書くべきだと思うよ。あ、とよく当然にとかいうけど魔法の言葉じゃないんだから」

「まあまあ、言いたい事はわかるが、あくまでも答案の参考だから」

「最後に③の類型で債務者の責任財産の減少とかあるけど」

「割愛で、また別の機会にやろう。外見て見ろよ」

「わわ、満月が。あっーーーそういえば」

「なんだ」

 「思い出した、三か月前に貸した、ゲーム返せよう」

「今、第三者に侵害されてるから(汗)」

「嘘つけ!」

「わ、わかった、来週の日曜日家に来い」

 

そして、日曜日、ゲームを返しに貰いに行くのだがまさか恐ろしい体験をしようとは夢にも思わなかったのである。

 

                                   続く

参考:論文基本問題②民法120選4第版

   ライブラリ法学基本講義5基本講義債権総論[角紀代恵]著

   ロースクール民法⑤(下)井上英治

*文字の色や太さは個人的判断です。

あと今回は多少、私見が入っているのでこのまま鵜呑みにして損害にあったとしても責任はとれないのであしからず。 あと補足ですが最近の学説では③の債権を侵害したが消滅しなかった場合は、個別具体的に判断する必要があり類型化するのは妥当ではないという学説があるそうです。参考までに。